現在このペプチドナノアレーとレドックスタンパク質とをコンジュゲートさせ、そのレドックスタンパク質の活性を光制御することで、マイクロリアクターあるいはμTASへの展開を試みています。
 得られたペプチドナノアレーは、そのマクロダイポールと配位金属間の共同的相互作用により、効率的な一方向の電子移動が確認されました。さらに、基板表面に光誘起電子供与体、ペプチド末端に電子受容体を導入することで、ペプチドのマクロダイポールと共役した一方向への光電変換機能を有するペプチドナノアレーの構築に成功しました。この研究で得られたペプチドナノアレーは、ペプチド数分子が1つの機能素子として機能するために、そのサイズは数nmであり、このペプチドナノ集合体より成るダイオードアレーが既存のフォトダイオードアレーに比べ格段に集積度の増したデバイスとなる可能性が期待されます。
 生体におけるベクトル的な物質・電子の移動およびエネルギー・物質変換機能はα−ヘリックスセグメントが膜に対し垂直配向し、同ペプチド鎖中の官能基が特定の空間配置を取ることで発現されています。α−ヘリックスペプチドはその光学活性・マクロダイポール・官能基の特定空間配置等の性質により、その垂直配向膜はタンパク質モデルのみならず、非線形光学素子や情報変換素子等の分子素子として期待が持たれています。従来、ペプチド垂直配向膜の調製には末端チオール化したペプチド分子の自己組織化単分子膜法が多く用いられているますが、同手法では、ペプチド間の強いマクロダイポール相互作用のために、そのマクロダイポールの一方向制御が困難でした。我々の研究室ではでは基板上でペプチドの逐次重合を行うことにより、そのマクロダイポールの一方向制御を行うと共に、逐次重合の過程で各種金属とペプチド側鎖との錯体形成を行うことで、金属配位子が3次元的に特定の距離・配向で固定化され、マクロダイポールの方向が揃ったペプチドナノアレーの構築法を確立しました。

エネルギー・物質変換能を有するペプチドナノアレー